世代会計で考える消費税・所得税・社会保険料
島澤諭氏が消費税と「将来世代」の関係について書かれています。
消費税増税を予定通り実施した場合に負担が軽減される「将来世代」は「まだ生まれていない世代」だけであり、現在生存している世代(以下、現存世代)間で比較すれば世代間格差を拡大する(高齢者ほど負担が少ない)ことが指摘されています。
間違いではないが、この記事だけでは「消費税は若者ほど損」と誤解され、将来世代からの「税金泥棒」を阻止するための消費税増税実施という著者の志向が伝わらない惧れがあると思い、さらなる検討を加えました。
「将来世代」への負担軽減と「現存世代」内における世代間格差是正については、どの政策がよりマシかを比較していく必要があります。
まず島澤氏の論考を表にすると下のようになります。
消費税に限らず、如何なる増税も将来世代の負担を減少させます。
一方、現存世代内の世代間格差については、どの税目を増税するかで大きく異なります。消費税増税で現存世代内の世代間格差が拡大する理由は「増税時点から死ぬまでの納税期間の差」によるものですが、同様な考え方で他の税目について検討します。簡便のため、「22歳で就職、65歳で引退、80歳で死亡する労働者」をモデルとします。
各税目ごとの「納税期間」は下の表のようになります。
相続税は税額が少なく、法人税は負担の帰属が複雑なため検討しませんでした。
一見して、所得税・社会保険料の負担増では、現存世代内の世代間格差悪化が消費税増税の場合より激しいことが分かります。
この結果を島澤氏の論考に付け加えてまとめました。
共産党の「減らない年金」財源は財源にならない。
高齢者の増加と現役世代の減少で年金の調整(減額)が不可避になっています。
「マクロ経済スライド」と言ってザックリ説明すると、年金払う現役世代が少なくなったので、賃金や物価と比較した年金の実質的価値を減らしましょうという話です。
共産党はこの「マクロ経済スライド」を廃止すべきと言っています。
上記記事によると基礎年金のスライドを廃止するのに7兆円が必要とありますが問題はその財源です。
共産党の財源案では、「年収1000万円以上のサラリーマン」から取る厚生年金保険料を増額し、それを基礎年金減額停止の財源にするとあります。
しかしそれは年金制度的に不可能かつ不適当なのです。
なぜか。
まず年金の仕組みとして、全国民が払う基礎年金と、サラリーマンだけが払う2階部分の厚生年金があります。サラリーマンの場合は基礎年金も厚生年金も給料天引きで一括して取られていますが、財源としては別々の会計に入ります。
厚生年金はサラリーマンだけが払っているので貰うのもサラリーマンだけです。自営業者は国民年金保険料が定額で安い代わりに給付も基礎年金のみ。これは職業間の公平を考えれば当然ですね。
しかし共産党の財源案では、サラリーマンが払った厚生年金保険料を自営業者の基礎年金財源に流用する、つまり自営業者がサラリーマンの払った保険料を奪うということになり、法律違反はもとより職業差別となります。マルクスが泣いていますね。
所得に関わらずどんなに富裕でも月1万円程度の国民年金保険料しか払わなかった自営業者やニートが、高額な厚生年金保険料を払い続けたサラリーマンの厚生年金財源を奪うなんて職業間で不公平な差別じゃないですか。
法的にも公平性としてもメチャクチャな馬鹿政策はいい加減にしていただきたい。